女性の病気 徹底検証 その1〈vol.4〉

〜更年期障害〜


現代医療の更年期障害の治療と
~自分はどんな治療を望むのか、
治療法の特徴を理解して積極的に治療する気持ちをもちましょう~



まず更年期障害であると診断を受ける

更年期障害は症状が似ている病気が多いため、
治療を始めるには、更年期障害が疑われるという診断を受ける事がまず必要です。
判断の基準になるのは、他の病気の可能性がない事、 
エストロゲンの低下と性腺刺激ホルモン(LH・FSK)の上昇が認められる事、です。
診察では問診で年齢や症状、病歴や現在の環境などくわしく確認し、
必要なら血液検査でホルモン量を測定します。
また、内診や細胞診などで他の病気がないか確認したり、
心理テストをが行われたりします。
他の病気が隠れているか診断が難しい時は、
ホルモン補充療法を検査的治療として行い、
症状が改善するかどうかを見て判断材料とする事もあります。

更年期障害の診察を受けるのと同時に、更年期以降心配になる骨密度やコレステロール値を調べるなど、人間ドックや健康診断を受けておくのも良い事です。



その人に合わせた治療法を組み合わせる

病院での薬物療法は…
・症状に合わせた「対症療法」
・ホルモン不足の状態に早く体が慣れる様に全体を整えていく漢方療法」
・不足した女性ホルモン(エストロゲン)を補い、ホルモンバランスを
 整える「ホルモン補充療法(HRT)」
…があります。

さらに、1人1人の症状に合わせて日常生活へのアドバイスをしたり、
カウンセリングなど心理療法が行われる事もあります。
自分で症状を和らげる方法としては、
リラックス効果のあるアロマテラピーやマッサージなども有効です。
更年期障害は人により症状が多岐にわたります。
それぞれの生活環境もさまざまなため、その時の症状や状態をしっかり説明し、
医師と相談しながら、納得して治療を進めて行く事が大切です。



「対症療法」について
つらい自覚症状を緩和するために行われます。

対症療法は特定の症状を改善するために行われます。
早く症状を改善したい場合など、ホルモン補充療法と併用される事もあります。
薬には色々種類がありますので、説明をよく聞き、
どんな治療薬を使用しているのかきちんと把握しましょう。
効果的に治療を行うためにも、作用の現れ方を医師に報告、相談をして自分に合った薬を見つける事が大切です。

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対症療法で使われる事の多い薬


自律神経調整剤
ほてり、発汗などの改善
ホルモン剤が使えない場合や症状が軽い場合に使用される事が多い

抗うつ剤・精神安定剤(抗不安剤)・睡眠薬
憂うつ感やイライラ、不眠など精神的な症状の改善に
ほてりや肩こりなどの症状に効果があるといわれる薬もある
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「漢方療法」について

症状や体質などから薬が処方されます。

漢方薬は長い年月をかけて、安全で有効な生薬の組み合わせが確立して来ました。
特に女性の数々の症状に対して多く処方があります。
漢方では体を作る要素を「気」「血」「水」と考えその流れを改善する事で
全身のバランスを整えようとします。
更年期の主な症状は「血」が滞った状態と考えられますので、
まずは血の流れを良くする事をベースに、
その人の体質や細かい症状に合わせ薬が処方されます。
たとえ同じ症状であっても、体質・体格・体力などによってきまる「証」が違えば、
1人1人処方される薬が違ってきます。(証…証拠・あかし)
いわゆる「オーダーメイドの治療といえます。
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効果が現れるまでに、少し時間がかかるとされますが、症状や証にあった漢方薬は更年期障害に良く効きます。
ホルモン補充療法を受けられない人や、ホルモン剤に抵抗のある人には、勧められる療法です。


漢方にもある副作用

副作用がないと思われがちな漢方ですが、体に不調が起こる事もあります。
バランスを整える過程で起こっているものもあります。
不調が現れたら医師に相談しましょう。
自分の判断で薬を服用すると、かえって体に悪影響を与える事もあるので注意しましょう。

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更年期障害で使われる事の多い漢方薬

加味逍遙酸(かみしょうようさん)

のぼせ・冷え・肩こり・憂うつ感・不眠・イライラなどの多くの症状が出ている場合

冬帰芍薬酸(とうきしゃくやくさん)
虚弱体質タイプの冷え・疲労感・めまい・肩こりなどの症状

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
中肉中背タイプのほてり・のぼせ・冷えなど
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「ホルモン補充療法」(HRT)について
HRTとはエストロゲンを補う治療

更年期障害を起こす原因となっている女性ホルモン(エストロゲン)の不足を補う。
症状を改善する治療法で、原因療法ともいえます。
状態により黄体ホルモンと併用します。
のぼせや発汗・動悸などの改善を目的に行う事が多く、比較的早期にホットフラッシュに対する効果が得られます。
さらに、気分の不調や間接痛など更年期のさまざまな症状を幅広く改善していきます。


更年期以降の病気の予防するHRT

HRTを開始するとさまざまな症状が落ち着きます。
肌のはりが良くなると感じる人も多くいます。
エストロゲンには多くの効果があり、
補充を続けることには、骨粗鬆症の予防など閉経のヘルスケアに対する利点もある。
HRTを続ける事のメリット・デメリットを信頼出来る医師と相談し、
必要最低量の薬を用いるなど、自分に合った方法を取る事が重要です。


☆HRTを始める前の注意点
多くの女性はHRTを行う事ができますが、
体の状態によってこの治療を受けられない人や、注意が必要な人がいます。
治療を開始する際には、健康診断や子宮がん・乳ガン検診を行うのが望ましいとされています。

◎次の項目にあてはまる人は必ず医師に相談して

●妊娠の可能性がある、授乳中である
●子宮がん・乳ガンにかかっている、かかったことがある
●血栓症・塞栓症にかかっている、かかったことがある
●心筋梗塞・脳卒中にかかっている、かかったことがある
●肝障害がある
●ポルフィリン症で急性発作を起こしたことがある

(ポルフィリン症…日光にあたると皮膚障害を生じる疾患
ヘモグロビンを作る物質の合成される経路に異状がある)


・喫煙は乳ガンリスクを高めるなどさまざまな悪影響を及ぼす。
 またHRTを開始すると喫煙で血栓が出来やすいともいわれている
 禁煙する事が必要。

・60歳以上で新規に開始する場合は、
 メリットよりリスクが高まる可能性も指摘されている。



☆エストロゲンの働き

更年期に入ると減少してしまうエストロゲンは卵子を発育させ、
子宮の内膜を厚く増殖させる他、さまざまな代謝に関係し、多くの働きをします。

・乳腺の発達を助けてふっくらした形を保つ
・コラーゲンの合成を助けて肌のツヤやハリを保つ
骨量のバランスを整え骨を強く保って関節痛や骨粗鬆症を予防する
・コレステロールのバランスを整え動脈硬化を予防する
・腟内の自浄作用や柔軟さを保ち萎縮を予防する
・脳の血流を増やし活性化する(アルツハイマー病やうつ病を予防するといわれる)


【HRTのメリット・デメリット】

メリット
●のぼせ・ほてり・発汗などの更年期障害の代表的な症状を改善する
●意欲や集中力を回復、気分の落ち込みなど精神的な症状を和らげる
●不眠や関節痛、外陰・腟の乾燥や炎症等の改善
●骨からカルシウムが溶け出すのを抑え骨粗鬆症を予防する
悪玉コレステロールを減らし善玉コレステロールを増やす事で動脈硬化を防ぐ
●皮膚のコラーゲンを増やし肌の潤いを保つ

デメリット
〇不正出血が起こる
黄体ホルモンを周期的に投与すると、月経のような出血がおこる。エストロゲン単独や黄体ホルモンの連続投与では、はじめ不正出血がみられますが、体が慣れるとなくなります

〇乳房痛が起こる事も
エストロゲンや黄体ホルモンの作用で、月経の前の様な胸の張りや痛みを感じる人も多くいます。症状の起こり方は個人差があり、しだいにおさまる事がほとんどです

〇腹痛・胃痛・むくみ等の症状が現れる
妊娠初期のような不快な症状が起きる事もある。乳房痛と同じように個人差があり、体が慣れるとしだいにおさまります。

〇乳ガンリスクがわずかに上昇する事がある
海外報告では5年以上エストロゲンと黄体ホルモンを併用したHRTを行った場合、乳ガンリスクがわずかに上昇すると言われています。エストロゲン単独のHRTでは乳ガンの増加は認められていません

エストロゲンだけの投与では子宮体がんのリスクが高くなりますが、黄体ホルモンも投与する事で心配がなくなっています。エストロゲンだけのHRTでも3~6ヶ月なら子宮体がんのリスクはないとされています。

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薬の種類と投与方法

HRTで使われる薬は大きく分けて3つ。
症状や閉経しているか、なと他の病気との関係など考慮し、薬や投与法が決められる。

エストロゲン製剤(エストロゲンを補うための薬)
・内服薬…主に使われるのは結合型エストロゲン錠剤。
 天然型エストロゲンのうち活性の高いエストラジオールを主成分とする錠剤も
 使用されている。
・経皮吸収薬(はり薬・塗り薬)…皮膚から入った薬はそのまま血中に吸収される。
 飲む薬のように胃や肝臓を通る事がなく、胃腸・肝臓に影響を与える事が少ない。
 エストラジオールという成分卵巣から分泌されるエストロゲンとほぼ同じ構造を持つ。
 中性脂肪や悪玉コレステロルを増加させない。
 はり薬は下腹部に、塗り薬ははり薬にかぶれてしまう人などに良い。

黄体ホルモン
子宮体がんを予防するために使用される

エストロゲン、黄体ホルモン 両方の配合剤
ひとつの薬で、エストロゲンと黄体ホルモンの両方を補う事が出来る
・内服薬…エストラジオールとレボノルゲストレルの配合薬
・経皮吸収薬(はり薬)…エストラジオールと酢酸ノルエチステロンの配合剤
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若い女性、男性に起こる更年期症状


●プチ更年期
20~30代の若い女性に、まるで更年期のような症状を訴える人が多くなってきた。
無理なダイエット、職場・地域の人間関係や夫婦関係によるストレス、過労などにより、
ホルモン分泌をうながす脳の中の視床下部一下垂体の指令が乱れる事が原因。
卵巣のおとろえが原因ではない。
でも、女性ホルモンであるエストロゲンが低下した状態が長期間続けば、
将来は不妊症・骨粗鬆症・動脈硬化になるリスクが高くなる。

治療方法には…
・ホルモンを補充する
・漢方で体のバランスを整える

早く治療開始すれば回復も短期間ですみます。
月経不順や無月経はほっておかず、まずは基礎体温をつけ産婦人科を受診しましょう。
規則正しい生活習慣を心がける事も大切です。


●男性更年期
男性更年期も加齢共に男性ホルモン(テストストロン)が減少していくのが原因。
ストレスなど社会因子の影響が強く現れ、個人差も大きい。

症状として…
・疲れやすい
・無気力
・憂うつ感
・イライラ
・肩こり・腰痛
・不眠
・発汗
(参照:バックナンバー…③更年期の乗り切り方

治療方法には…
その人の症状に合わせ、抗うつ剤や漢方薬など、男性ホルモンの補充治療が行われる事もあります。
男性更年期外来もできています。

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